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しなやかなπ配位子 -重原子上の置換基に応じて自在に構造を変化させることに成功- (大学院理工学研究科 斎藤雅一教授)

2015/08/11

 今日隆盛を誇る有機金属化学の源流は、1951年に合成され、最終的に1956年にその構造が明らかにされた、鉄がシクロペンタジエニル配位子によりサンドイッチされた構造をもつフェロセンの発見に遡ります。このシクロペンタジエニル配位子は5つの炭素からなるアニオン性配位子であり、ベンゼンと同様に芳香族性を有するために、常に平面構造をとることが知られています。一方、その骨格を構成する炭素を同族で高周期の元素に置き換えたアニオン性配位子の研究はほとんどありません。わずかに知られているのは、骨格にケイ素やゲルマニウムを含むアニオン性配位子で、それらは確かにシクロペンタジエニル配位子と同様に平面構造を保ったまま遷移金属をサンドイッチすることでありますが、合成上の制約から重元素上の置換基の種類が限られていたために、その平面構造が重元素を含む配位子の本質なのかどうかはわかっていませんでした。
 今回、斎藤教授らが既に報告しているスズを骨格に含むアニオン性配位子を利用して合成したアニオン性ルテノセンと求電子試薬との反応により、重原子であるスズ上に自在に置換基を導入することに成功しました。その構造を調べたところ、スズ上の置換基に応じて、アニオン性配位子の構造がよく知られている平面構造からゆがんだ構造まで変化することを明らかにしました。つまり、重原子を骨格に含むアニオン性配位子は、炭素とは異なり、置換基に応じてしなやかな構造をとることが明らかになりました。本成果は、2015年7月13日に、イギリス王立化学会の雑誌Dalton Transactions誌のオンライン速報版として公開され、本誌刊行の際には、その研究内容がInside Front Coverで紹介されることが決まっています。

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