2011年度春の埼玉大学理学部公開セミナーを3月16日に開催しました。本セミナーではあらためて「放射能と放射線」について"理学の立場"からその基礎知識を解説しました。当日は約70名方にご参加いただき、皆さんと科学の話題で2時間半ほどの時間を共有しました。
セミナーでは、井上直也教授が物理学の視点からアルファ線やβ線、ガンマ線などの種類を説明し、実際に測定器で放射線を検知して、目に見えない放射線を身近なものとして示しました。埼玉大学で測定した放射線強度も示して、原子炉事故に伴い、3月15日、16日に放射線強度数値が跳ね上がったものの、以降は下がっており、それ以降、さいたま市で検出可能なほどの原発からの放射線の継続的な放出は起こっていないことを紹介しました。また、永澤明教授は化学の立場から放射線と放射能の違いを説明し、「放射線は原子が壊れたときに飛び出す高エネルギー粒子で、放射能は放射線を出す能力を持つ物質であり、最近では放射能よりも放射性物質と呼ばれている」と説明しました。生物の立場からは大西純一教授が、実験の結果などから「放射線は微量でも生物に影響を及ぼす」としつつも、「病気や発ガンにまでつながる確率は、低線量では検出できないほど低い」と解説しました。
会場からも活発に質問が相次ぎ、それらに丁寧に答えることで、「正確な理解を」、という目的にかなった機会として意義深かったと思います。ご来場いただいたかにはお礼申し上げます。また当日質問をお寄せいただいた方にはその回答を後日お送りします。しばらくお待ちください
次回の理学部公開セミナーは11月の大学祭時に開催予定です。ご参加をお待ちしています。
以下はセミナー開催に当たってのご案内です。
2011年度春の埼玉大学理学部公開セミナーでは、「放射線と放射能」を取り上げます。特に理学の立場から両者の基礎について解説し、講演とQ&Aを取り混ぜて、よりわかりやすい説明を行う予定です。「放射線」の実体について、また自然放射線にも着目して、その強度や空間特性などをもとに、現時点でのさいたま市における放射線強度について考えます。また、化学面からは放射線を放出する物質としての「放射能」について解説します。加えて、放射線の管理の立場から、代表的な数値をもとにして、厳格な管理基準とその背景となる生物や環境への放射線の影響度について解説します。
埼玉大学理学部主催のセミナーとして、今回も「理学」にふれる機会として、どうぞ奮ってご参加ください。
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埼玉大学理学部 公開セミナー2011(春)
理学の立場から「放射線と放射能」を知る
主催:埼玉大学理学部 共催:科学者の芽育成プログラム
後援:埼玉新聞社
平成23年4月16日(土)13:30~15:30
埼玉大学総合研究棟1F シアター教室
無料(事前申し込み不要)
2011年度春の埼玉大学理学部公開セミナーは「放射線」を取り上げます。
「放射線」は、その危険性に不安を持たれている方も多いかと思いますが、
一方で身近な存在であり、有益な面も持ち合わせています。本セミナーでは
あらためて「放射能と放射線」について"理学の立場"からその基礎知識を
解説します(*)。また、Q&A形式で理解を深めていただく時間も
用意しました。広く多くの方のご来場をお待ちしています。
[講演]
●13:30~13:50
「物理の立場から放射線を知る」 井上直也
(埼玉大学大学院理工学研究科 教授)
●13:50~14:10
「化学の立場から放射性物質を知る」 永澤 明
(埼玉大学大学院理工学研究科 教授)
●14:10~14:30
「法規と生物学の立場から放射線を知る」大西純一
(埼玉大学大学院理工学研究科 教授)
[Q&A]
14:40~15:30
「放射線と放射能」について
埼玉大学大学院理工学研究科教員
(*)原子力発電所の事故処理の現況や放射線?放射能に対する医学的な対処法については今回のテーマに含めませんのでご了承ください。
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